振り向いたら負け、振り向いたら負け、
そんな言葉を自分に言い聞かすように心で唱え、『よしっ』と気を引き締め直すと視線を廊下へ。
ロングのブーツを脱いで冷たい廊下に上がり、明かりをつけながらリビングへと向かう。
扉を開けばすでに気配を感じて待っていたらしいチビが座って待ちかまえていて、その姿には自然と顔もほころび身を屈めて抱きしめ撫でる。
「ただいまぁ、チビ~」
ワシャワシャと冬毛でモワモワの姿を堪能し、程々に立ち上がるとエアコンのスイッチを入れて自室へ。
ヒヤリとした空気に鳥肌立ちながらラフな部屋着へと着替え始め、素肌を晒したタイミングに自分の視覚で捉えた肌の無数の痕には苦笑い。
「意外と・・・独占欲強い人」
鏡にも映った自分の体には自分では捉えにくいところにも伊万里さんの独占欲の印がはっきりと残っていて、それを指先で触れて確認していれば余計な熱が浮上しそうだと手を離した。
そうして大きめのセーターをワンピースの如く身にまとい、太腿まであるルーム用のニーハイを身につけるとリビングに戻る。
程よく暖房効果が効き始めた部屋は心地がいい。



