「とにかく、これからよろしくやってくれ。席は若狭の後ろが空いてるから、そこを使ってくれ」



蓮君は私の後ろの席に座った。

私は体を回転させて、改めてあいさつする。



「蓮君、よろしく」

「は? ふざけんな、誰がお前とよろしくやるか」



カチン。

なんて言い方。

確かに優さんの言っていた通りの男だ。



「私は優さんのこと知ってて、蓮君のことよろしくって言われたの!」

「お前、うるさい」

「でも、優さんが……」

「兄貴の話なんかすんな」

「え……」

「俺はお前のこと知んねぇし、お前は俺のこと知らない。兄貴の話なんか……二度とするな」

「そんなの、関係ない」

「は? お前、人の話、聞いてた?」

「私は優さんによろしくって言われたから、蓮君と仲よくなりたいとも思ったの。それに、知らないならこれから知ってけばいいよ! だから」

「お前、うぜぇな」

「え?」

「兄貴とどういう関係か知んねぇけど……迷惑なんだよ」



そう言って、蓮君は寝てしまった。



確かにぶっきらぼうで、無神経でいやなやつ。

でも、それでも、優さんと約束したんだ。

迷惑かもしれないけど……お願いだから、優さんとの約束を守らせて……。

優さんは蓮君にとって大事な人であって、私にとっても最高の思い出をくれた大事な人との約束だから──。



-fin.-