短編集 【ストーカー】



――――――


父「ユウナ?体の調子悪いのか?
もうご飯出来たぞ。」


ユウナ「・・・・・・・。」


父「・・・入るぞ。」



“ガチャリ”



ユウナ「・・・・・・・・。」


父「・・・どうした?」


ユウナ「・・・・・・・・・。」


父「学校で嫌な事でもあったのか?」


ユウナ「・・慣れてるから・・大丈夫・・。」


父「・・・何が・・?」


ユウナ「他の子にはお母さんがいるけど・・・私にはお母さんがいないんだって・・。」


父「・・・・・・・・。」


ユウナ「・・・何かある度に、

“ユウナはお母さんがいない可愛そうな子だから”って・・。

“ユウナは母親の愛情を知らない可愛そうな子だ”って言われ続けてきた・・。

だから・・もう慣れっこだよ。」


父「・・・・・・・・・・・・。」



ユウナ「・・ッス・・ッス・・・グスン・・・。」


父「・・・・・・・・・・・・。」


ユウナ「・・ッス・・・ッス・・・・・・。」




父「・・癌だって分かった時・・。
余命半年だって言われた時・・。」


ユウナ「・・?」


父「抗がん剤っていう癌の治療薬を投与すれば、まだ余命を延ばせられるって医者から説明を受けた。」


ユウナ「・・・。」


父「でもお母さんはそれを拒否した。

ユウナにあげる母乳に影響が出るかもしれないって・・薬は一切飲まなかった。」


ユウナ「・・・。」


父「ある時、お母さんが独身時代に溜めていた預金通帳を・・へそくりってやつだな。

それをお父さんに渡してきて、

“ユウナがオシャレを覚えたらこれで服を買ってあげて”と・・。

“大人になってメイクを覚えたらこれで化粧品を買ってあげて”と言ってきた。」


ユウナ「・・・・じゃあ・・いつものお小遣いって・・。」


父「お母さんがユウナの為に残したお金だ。」


ユウナ「・・・・・・。」


父「期間は短かったかも知れないけど、
ユウナは覚えていないかもしれないけど、

お母さんは最期の時までユウナに愛情を注いでいたんだよ。

だから、“母親の愛情を知らない”、
“可愛そう”なんて言ってくる子には言い返してあげなさい。

“私ほど母親の愛を受けた娘はいない”って。」


ユウナ「・・・・・・ウン・・・・・。」


父「落ち着いたら下に降りてきなさい。
今日はユウナの好きなロールキャベツだから。一緒に食べよう。」