『…ああ、そうだ』

横断歩道の信号待ちで、不意に拓真君がスマホを取り出して、聞いてくる。

『何?』
『もし良かったら、萌さんがやってる、恋愛ゲームアプリ、教えてもらおうかな?』
『ゲームアプリ?』
『うん…萌さんの恋人がどんな男か見てみたいし、僕も、そのゲーム少しやってみようかなって…ダメかな?』
『別に良いけど…』

確かに、あの手のゲームは拓真君のような人がやれば、そのままBLものとして楽しめる要素も満載だけれど、ちょっと待てよ…と、考えてしまう。

『…何か、問題でも?』
『ううん…ただ、もし拓真君も琉星のこと好きなってしまったら…どうしよう…』

拓真君が、恋のライバルになるなんて、洒落にならない。

『大丈夫だよ、そんなことは絶対にないから』
『そんなこと、わからないでしょ?』
『萌さん、忘れてるかもしれないけど、僕には現実の世界に、リアルな”好きな人”、いるからね…それに』

一旦言葉を区切ると、チラリとこちらを見て、にやりと笑ったように見えた。

『…僕はやっぱり、バーチャルな世界より、生身に触れられる方が、いいからさ』

そう語る拓真君の瞳に宿るのは、微かに妖艶なまでの欲情が見えた気がして、ドキリとした。

日曜日の本番まで、後4日。

当日までの残り三日間で、どこまで真実の恋人まで近づけるのか。

とりあえず、前途多難な問題が発覚した、怒涛の3日目が過ぎ去った。