『萌…いい加減、目覚まして』
『…はい?』
『琉星なんて、この世に存在しないでしょ』
『…いる…よ?』
『はぁ…だからソレ、ゲームの中の話でしょ』

そう…私、”森野萌”はガッツリ、恋愛シュミレーションゲームに嵌ってる、乙女系ゲームヲタク女子。

高校生の頃、軽い気持ちで手を出した、恋愛系アプリにドップリ嵌ってから、8年。

目下、恋愛ゲーム【敏腕外科医の花嫁候補】の若手有能外科医”小早川琉星”と交際1年目を迎え、ゲームの中では新人看護師の私は、毎日のように彼に溺愛されている。

『…美園、急にリアルに戻さないでよ』
『ここは現実(リアル)なのよ、萌』

琉星との甘いシチュを思い起こす余裕もなく、諭すような美園の声に、一機に現実に引き戻される。

『…わかってるし』
『この歳まで、まともに恋愛もせずに来て、このままずっと行くつもり?そのうち、変な男に騙されるよ』
『言っとくけど、私、美園より恋愛経験は豊富だからね』
『は?』
『先生と生徒の禁断の恋愛から、切ない不倫まで経験済みだし…あ、でも悪い男に引っかかる系も悪くないかもね…』
『あんたねぇ…』

自ら新しいジャンルの恋愛妄想に入りこむ私に、心底呆れた美園の説教が始まりそうになった時、後ろから名前を呼ばれ、振り返ると、懐かしい旧友が数名、こちらに手を振りながら向かてくる。