『ダメダメ、相手いる子は興味ないでしょ』
『あ、そっかぁ、森野さん彼氏いるんでしたね』
『…うん、まぁ…ね』

笑って誤魔化すと、斜め前に座っている美園の、シラ~っとした視線と目が合う。

咄嗟に、その痛い視線から逃げるように話題を振った。

『あッ、ねぇ…時枝君は?』
『時枝さん?』
『彼も、一応20代独身のフリーでしょ?』

一瞬みんな忘れてたと言わんばかりの『あ~』というつぶやきが漏れ、即座に、『無い無い』『無理ね』『私も』『有り得ない』と続く。

やっぱりあの外見から、女性に嫌厭されてしまうのかもしれない。

『そもそも彼、3次元の女に興味ないでしょ?何か、アニメキャラの抱き枕とか持ってそうだし』
『確かに!』

…違う、3次元の男に興味がないのは、私の方だ。

『っていうか、女性全般苦手っぽいよね?うちらが話しかけても、いつもキョドってるし』

…それは、”女性に嫌われてる”という自覚があるから。

『万が一、告られても、即却下しますね』

…拓真君は男性が好きなのだから、それこそ有り得ない。

皆、拓真君の外見から想像しうるマイナスイメージを次々に口にし、予想通りの散々な言いぶりに、当事者でもないのに、少し凹む。

まだホンの数日だけど、みんなの知らない素顔に触れて、彼が周りが想像しているような人ではないことは、分かってるから。

『…違うのにな』

思わず、口からこぼれてしまった、つぶやき。

『え?今、何か言いました?』
『あ、ううん、何にも…』

私の独り言を拾った、香織ちゃんの問いに、慌てて誤魔化す。

もしかしたら、そう思うのも、”自分の為に無理させている”という引け目もあるからかもしれない。

他愛もない女子トークに適度に会話を合わせながら、昨日できたばかりの初めての男友達に想いを馳せた。