どうやら、話を聞く限り、その牧村という男は、リアルな男性の中では相当稀有な存在らしい。

…ただ、不思議なことに、その言動や行動は、聞けば聞くほど、琉星と似ている。

優しくて、気が利いて、スマートで…女性が欲しい言葉を全部くれる、大人の男性。

…だとすると、琉星も美園が言うように、誰にでも同じように接するホストのような男性だとも、いえるのだろうか?

『森野さん?どうかしました?』
『あ、ううん、何でもない』

香織ちゃんに声をかけられ、思考が中断され、我に返る。

私としたことが、どうかしてる…琉星を3次元の男と同等に考えるなんて。

思考を切り替えて、目の前の女子トークに意識を戻すと、未だ顔もはっきり思い出せない牧村さんの話題は、いつしか社内の独身でフリーの20代男子の話に移り変わり、誰が言い出したのか、恋愛対象として”有り”か”無し”か、という話に花が咲いていた。

『染谷君は?』
『無いね』
『私も無いわぁ』
『じゃ菊田さん』
『無いな~悪い人じゃないんだけど、出世しなさそう』
『私は…有りかも?…あの人結構、お金貯めてそうだし』
『あ~確かに!使うとこ無さそうだしね~』

イメージと勝手な想像だけの女子トークは盛り上がり、当人たちが聞いたら、”こっちから願い下げだ”と、言われそうだ。

『森野さんはどう思います?』
『えッ…私?』

唐突に振られ、何と答えようかと考える前に、篠原さんが助け舟を出してくれた。