…2か月後

午後 16:13




地下1階…薄暗い書庫の奥。

小さな明り取りの窓から、だいぶ日の落ちた夕闇の空に薄っすら見える乳白色の月。

その僅かな明かりの元、懸命に彼の腕に掴まりながら、それに応える。

一瞬でも気を抜いたら落ちそうになる腰は、かろうじて後ろの壁に支えてもらって。

『…っ』

唇が離れた隙に、短く息を吐けば、その瞬間に、耳元で囁かれる。

『何、気を抜いてるのかな?』
『ちょっと待っ…んっ』

最後まで言わせてもらえずに、すぐにそれは再開され、少しの休みの間も与えてくれそうにない。

最初は触れるだけだったものも、何度か繰り返すうちに唇の先を舐められ、それが合図のように小さな隙間を開けてしまうと、そこから次第に深いキスに変わていく。

初めのうちは、恥ずかしさが勝ってしまっていたけれど、今はもうだいぶ慣れ、相変わらずの気恥ずかしさは残るものの、嫌な感じはしない。

…ううん、それどころか、ただ直接肌が触れているのは唇だけなのに、なぜか身体の内側が熱くなり、いつの間にか全身の力が抜けていくような感覚に陥る。

『ん…っ…はぁっ』

不意に唇が離れ、ゆっくり息をしながら目を開ければ、目の前にはいつかの夜と同じよう
に、欲情の宿る瞳。

『フッ…いい顔してる』

あまりに近すぎる顔に、耐えきれず『もう…』と、拓真君の胸を押すも、びくともしない。

『駄目だよ、萌』
『じ、時間っ…今、仕事中だって…』
『まだ大丈夫だ』

そう言いながら、再び私の髪に触れ、隠れていた耳を梳いて表に出せば、そこにまた甘いキスを落とす。

『ぁ……くッ』
『いいね…だいぶ、慣れてきたな…』

こちらは、自然と口から漏れてしまいそうになる声を抑えるのに必死だというのに、嬉しそうに続きをはじめようとする、拓真君。

いい加減、その無神経さに腹が立ち、胸を押す手にグッと力をこめ、思いっきり顔を横に向けて、全身で拒否をしめした。

『もうッ!本当にやめてってば』
『え…』

恥ずかしさも加え、生理的に潤んでしまった目で軽く睨めば、まるで今気が付いたとばかりに、動揺しうろたえ始める。

『…悪い、俺また…暴走した?』

欲情の宿っていた目は一気に通常モードに変わり、自らの横行に気付いた拓真君は、両手を壁にあて、うなだれてしっかり反省の意を表す。