『それって、総務課の時枝なら良いけど、秘書課の如月だったらダメだとかいう話?』
『え』
『一応どっちも自分なんだが…』
『もちろん、どっちの拓真君だってダメじゃないよ…っ!』

言ってから、大胆な告白をしてしまったことに気付き、赤面する。

『俺も、どんな萌でも好きだよ』
『わ、私、今、好きとか言ってないから』

苦し紛れに誤魔化すも、『そう?』と嬉しそうに見つめ返される。

淹れたての紅茶からバラの上品な香りも漂い、その甘すぎる空間に、ここが職場であることもつい忘れてしまいそうだ。

『そ…それに、キス一つまともにできないとか、面倒でしょ』
『いや、そこはむしろ慣れてる方が困るかな』
『男って、そういうものなの?』

純粋な気持ちで問うと、『それ真顔で問われても…』と、困った顔をする。

『一般論は知らないが、俺的には、君がこういったことに慣れてないことの方が嬉しい』
『…嬉しい?』
『育成のしがいがあるだろ』
『な…』
『ついでに言っておくが、もし俺の気持ちが離れていくことを心配してるなら、その心配は必要ないから』

身体をこちらに向け、ジッと見つめられる。

『俺が触れたいのは、今もこれからも、萌だけだから…』
『…!』

真顔で、あまりに甘すぎるセリフを言われ、咄嗟に近くににあったクッションを抱きしめて、拓真君から距離を取るようにソファの端に移動する。