たった7日間で恋人になる方法


相変わらず背を向けたまま、『…そう来たか』と呟き、しばし真剣に悩む様子の拓真君。

『…厳しいが、萌が慣れるまでは我慢する…しかないか…』

少し気落ちしたように自答する拓真君の後ろに立つと、深呼吸を一つ。

渾身の勇気を出して、自分の腕を拓真君の腰のあたりから廻し、そのままぎゅっと抱きしめる。

『ッ!?』

驚いた拓真君の身体が一瞬で強張ったのが、伝わってきた。

『も、萌ッ??』
『振り向かないで。今、ものすごく恥ずかしいから』

自分から抱きついておいて、既に後悔し始める。

そもそも咄嗟のことで身長や体格差があるのを忘れ、まわした手を前で組めば、相当密着しなければならないことまでは、計算外だった。

唯一の救いは、頬を寄せた背中から感じ取った拓真君の鼓動が、自分と同じくらい早くて、なんだか安心する。

『嘘に、決まってるでしょ』
『嘘?』
『手も繋がないなんて、私が嫌だよ』

想いが伝わるように、少しだけまわした手の力を込める。

『それに、”ごめん”って言わなきゃいけないのは、私の方だし…いい歳してあんなに泣いたりして…』
『いや、悪いのは、男の俺の方だろ』

言葉には出さず、首を振って否定する。

『本当は今日、会った時に謝ろうって思ってたんだけど、朝から何か避けられてるみたいだったから』
『悪い…昨日の件で、君に完全に嫌われたと思って』
『私の方こそ、あんな風に子供みたいに泣いて、呆れられちゃって、避けられてるのかと思った』
『そんな訳ないだろ…むしろ、君の気持ちを無視して暴走した自分を止めてくれて、良かったと思ってるくらいだ』

拓真君の本心を聞いて、張り詰めたものが解かれていく。