たった7日間で恋人になる方法


『そ、そういえば』

沈黙に耐えきれず、口を開いてしまう。

『拓真君…あ、もう如月さんって言わなきゃだね』
『別に…どっちでも構わない』
『えっと…じゃあ拓真君、やっと秘書課に復帰できるんだね、おめでとう』
『…』

…あれ?何かいけないことを言ってしまったのだろうか?

出来るだけ明るいトーンで話してみるも、少しの沈黙ののち『…ああ』と抑揚のない声音が返ってきた。

『でも拓真君が急に総務課を辞めて、秘書課に復帰したら、みんな驚くね』
『総務の皆は、役に立たない雑用一人減ったからって、気にもしないだろ』
『そんなことないよ』
『それに、俺が如月だってことは知らないんだから、驚くわけがない』
『そ、それはそうだけど…あっ牧村さん!牧村さんはびっくりだよね』

彼からしたら、てっきり解雇されているものだと思ってるのだろうから、秘書として復活したこと知ったら、驚かないわけがない。

『確かに牧村は驚くだろうな…というより、アイツも馬鹿じゃない。俺が復帰したことで、全部悟るだろう』
『でもそれって、専務にとってはマズいんじゃ…』

拓真君が秘書課に復帰したことを知れば、裏で操作しているのが杉崎専務だってわかってしまうだろうし、そうなれば今度は専務自身の弱みを握られることにもなる。

『杉崎専務を甘く見ない方が良い』

眼鏡の中央を人差し指で持ち上げ、冷ややかな物言いで続ける。

『そもそも今回アイツは運が良かっただけだ、NY行きの件が無ければ、あの日専務のところに密告しにきた時点で切られてた』
『どういう意味?』
『牧村は専務をうまく利用してやったつもりでいるだろうが、実際はその反対だってことだ。専務は常に物事の数手先を用意してる…自分の鉄壁の保身はもちろん、おそらく牧村など、いつでも解雇に追い込める準備は、とうに終わってるはずだよ』