たった7日間で恋人になる方法


掴まれていた手首に触れながら、もう一度拓真君を見上げれば、やっぱり視線を逸らされ、胸がぎゅっと締め付けられる。

『拓真君、あのね…』
『ちょっと待って』

拓真君は私の言葉を遮ると、そのまま室内の奥に進み、専務の広いデスクの向こう側にまわり、その先にある窓にかかっている、すべてのブラインドを端から順に下していく。

まだ日が落ちきるにはもう少し時間があるのだけど、ブラインドから漏れる明かりを最小限に調整し、どうやら高層の景色が見えない程度にしてくれているよう。

明るすぎた室内は、隙間から零れ落ちる僅かな採光のみになり、専務室のところどころに置かれたスタンドやいくつかの間接照明の明かりを点ければ、明るすぎず暗すぎず、ちょうど良い明るさになる。

『あ…ありがと』
『紅茶で良いよな?』
『え』
『今入れるから、そっちのソファ座ってて』

拓真君の指差す先は、専務のデスクの右側、間仕切りにもなる高めのオープンラックの向こう側にある、応接スペース。

とはいえ杉崎専務のセンスだろうか、堅苦しい商談用のソファーではなく、ゆったりくつろげるほどの洒落たグレーのファブリックソファーに、ガラスのローテーブル。

周りにはいくつかの観葉植物が適度に置かれ、ここだけをみれば、オフィスであることを忘れてしまいそうだ。

言われたまま、座り心地のいい3人掛けソファの端に座ると、改めて室内を見渡した。

入口から見てすぐ左側には、現専務秘書である榊さんのブース、右側には半透明のガラスで囲われたミーティング用(?)のスペース。

中央奥にある専務専用デスクの手前左側には、摺りガラスで仕切られた小スペースがあり、今その摺りガラスの向こう側には、薄っすらと動く拓真君の姿が見える。