『あ、あのっ杉崎専務』
『ん?』
『私、勝手に思い違いして、突然こんな…本当に申し訳ございませんでした』
深々と頭を下げると、専務は意外にも柔らかな笑みを浮かべている。
『とんでもない、君にはむしろ感謝してるぐらいだ』
『…感謝?』
『ああ、たった一週間で、この食えない男の意外な一面を私に見せてくれたんだからね』
専務の言ってる意味がよくわからずキョトンとしてしまうと、隣に立つ拓真君が『専務、榊さんがお待ちでは?』と先を促し、ドアノブに手をかける。
『そう急かすなよ』
『別に急かしてなど』
『お前、わかってるだろうな?』
『…何のことでしょう』
『俺からのボーナスタイム、無駄にするなよ』
専務はそう言うと、拓真君の肩越しに意味ありげな笑みを寄こし、開け放たれた扉から、部屋を出て行ってしまう。



