たった7日間で恋人になる方法


『まぁ仕方ないさ…この如月に、どうしても今ここを離れたくないと、あんな風に頭を下げてお願いされたらね』

目を細め、まるで息子を愛おしむような目で、拓真君を見る。

『その代わり、当然だが、社長からいくつかの条件が出された。その一つが、如月の代わりにNYに行く人選だ。如月と同等…いやそれ以上の結果を出せと言われている』

杉崎専務が、上部役員の中で、まだ充分若手であるにも関わらず、ここまで社長の信頼が厚いのは、さすがと言うべきだろうか。

噂通り、この野心溢れる眼力と、人を引き付ける魅力は伊達じゃない。

ついその力ある瞳に魅了されていると、不意に視線が合い、笑みを返され慌てて逸らした。

『正直、時間もない上に、如月以上の人材となると、今現在第一線で活躍している奴しか浮かばず、そうなると、この中途半端な時期に動かしずらい。さて、どうしたものかと悩んでいたら…偶然にもこのタイミングで、牧村が私のところにやってきた』

専務は、それが先週の金曜日の夕方のことだと続ける。

『彼は、私が関与していることなど知らずに、単に”如月が偽名を使い、変装までして、社に居座っている”と報告にきた。驚いたよ、これまで一度も、毎日顔を合わせている君の課の人間でさえ気付かなったのにな。いよいよ如月がポカしたなと、思ったんだが…フン、君を助けるためだったと聞いて、合点がいった』
『専務、私のミスであることは違いありませんよ』
『全く強情だな、お前も』

交わされる会話から、二人の関係が互いに信頼し合っている、上司と部下であることは見て取れた。

それに今の専務の話から、牧村さんはやっぱり、拓真君が専務の身代わりになって解雇されたことまでは知らなかったのだと知る。