『森野さん、君は一体何を…』
『如月』
拓真君が、私の話を制止させようとするも、専務が即座に彼の名を呼び、暗黙のままに黙らせてしまった。
『森野さんと言ったね?…君は、彼からすべてを聞いていると』
『はい』
『そうか…君がね、なるほど…』
何故か、専務に上から下まで値踏みをするように見られ、一気に緊張感が増してしまう。
『専務、いい加減見過ぎです』
『ああ、そうだな…すまない』
拓真君に注意され、専務の視線が少しだけ緩み、ホッとする。
『実は、如月から君とのことは報告を受けていたんだが、頑として相手の名を割らなかったものだから、気になっていたんだ』
『すみません…私の個人的なお願いの為に、この1週間もの間、如月さんには随分ご迷惑をおかけしてしまいました』
『私は一向に構わんよ。確かに如月には時間外にもいろいろやってもらっていることはあるが、プライベートまで口を出すつもりはないからね…なぁ如月』
問いかけられ、一瞬拓真君が専務を非難するような目で見たような気がしたのは、気のせいか。
『で、私に話しておきたいことがあると言っていたが…何かな?直接ここまで来るとは、よほどのことだろう』
専務に先をふられ、一層緊張が高まるも、二人に気づかれないように息を吐き、いよいよここに来た本題に触れる。



