午後 12:20

昼休み。

さすがに社内で話せる内容じゃないからと、美園を連れだし、近くの公園のベンチでランチ。

気持ちいい秋晴れで空は高く、日差しを避けた木陰は、暑くも寒くもなくちょうど良い。

『なるほどね…』

昨日拓真君から聞いた話を一通り話すと、ワゴン販売で買ったサンドイッチを食べながら、美園がなんてことのないような返事をする。

『美園…もしかして知ってた…とか?』
『まさか。知る訳ないでしょ…って何でよ?』
『だって、あんまり驚いてないみたいだから』
『驚いてるわよ、普通に』

美園のその反応には、若干違和感を感じるも、あえて驚きを表面に出さずにポーカーフェイスを貫くのも、彼女らしい気もする。

『あ~でもね、実は昨日あれから思い出したのよ、あの顔どっかで見たような気がして…』
『専務秘書の頃の拓真君のこと?』
『前に秘書課主催の飲み会に行った時、いた気がするの』
『美園、そんな飲み会にも行ってたんだ』

驚いて聞けば、この上なく嫌そうな顔をする。

『帰りに待ち伏せされて、強制的に連れて行かされたのよ…って、この話、拗ねるから篠原には内緒にしてよ』

仕事上、秘書課との直接的なつながりなど無いはずなのに、彼女の評判は上層階まで広がっていて、美園を誘ってくれという男性が多いというのは、単なる噂ではなかったらしい。

わが親友ながら、誇らしくもあるけど、本人にとっては迷惑以外の何物でもないらしく、”客寄せパンダじゃないんだから”と、憤る。