その後ろ姿を、目で追いながら、しばらくその場で立ち尽くした。


私…何を、期待していたんだろう?


あんな風に拓真君の腕から逃げて、きっとひどく傷つけたくせに、何事もなかったように、友達にでもなれるとでも…?

…我ながら何て単純なのだろう。

人の気持ちはそんな簡単に割り切れるものじゃない。

リアルな恋愛経験がないことが、こんな形で自分を苦しめるなんて。

『…ッ』

首の付け根辺りがまた疼きだし、首元を抑える。

こうやってこの疼きがある以上、たった一週間の関係が、妄想や夢なんかじゃなく、現実だったことを、嫌という程思い知る。


”…萌”


耳元で囁かれた低く甘い声も、まだこんなにも鮮明に思い出せてしまうのに…。



・・・・・・・