2階エレベータホール手前、執務室に向かう廊下の壁にある、掲示板。

通常は、ポスターやらちょっとした社内向けのお知らせが張ってあり、いつもは素通りしてしまうそのボードの前に、今日は軽い人だかりができていた。

その中に、先に出て行った、篠原さんと香織ちゃんを見つけ、二人の後ろから少し背伸びをして掲示板を覗き込む。

もちろん、みんなが注目しているのは、社員食堂の営業時間変更のお知らせの横に、サラリと張り出された、A4の上質紙。


【 辞 令

営業部 第一営業課 主任
牧村 誠也 殿

上記の者を、新事業海外開発部 課長補佐として、ニューヨーク支社勤務を命ずる  】


『…本当なのね…』
『だから、ガチだって言ったじゃないですかぁ』

いつもだったら、香織ちゃんの言葉使いに小言を始める篠原さんも、ショックのあまりか、黙って掲示板にくぎづけになってしまっている。

『なんで、こんな中途半端な時期に…』
『急過ぎだろ』
『やっぱ、問題おこしたんじゃね~の?女がらみで』
『馬鹿ね、ニューヨーク支社よ、しかもあの歳で一機に課長補佐って、明らかに栄転でしょ』

幾人かの社員が、口々に驚きの声を上げる。