たった7日間で恋人になる方法


拓真君はベット脇の壁に悠然と寄りかかり腕を組むと、含んだ笑みを浮かべてみせる。

『…おかしいと思わなかった?』
『おかしい?』
『今日、君の望み通り、恋人役を演じて紹介話をチャラにし終わったのに、今の俺はどう見える?』
『どう見えるって…』
『君のよく知ってる”時枝君”に戻ってるかな?』
『あ』

確かに、考えてみたら、もう既に恋人の演技をする必要もなく、元々の拓真君に戻っていいはずなのに、今、目の前の拓真君は…

『…どうして?まだ、演技し続けてる…とか?』
『いや、俺は今、演じてなんかいない。これが素の自分だよ…そうだな、演じてると言うのなら、職場での”時枝拓真”の方だ』

何故か、フルネームで自らの名前言い、こちらの反応を伺っている様子。

再び繰り出された告白に、動揺してうまく次の言葉が出てこない。

どういうことなの?

ずっと、この一年同じ課で働いてきた”時枝君”は、本当の彼の姿じゃなかったってこと??

今、目の前にいるこの男性は、いったい…