『!!』
驚きのあまり、咄嗟に、拓真君の胸を強く突き飛ばす。
さすがに細身とはいえ、体幹のしっかりしている拓真君はびくともせず、私の方はその反動で、いくらか後ろに退いた。
『なっ…何するの!?』
心臓の鼓動は、急激に早音を打ち、手の甲で自分の唇を抑えると、拓真君を見上げた。
『別に俺、酔ってなんかいないから』
『え?』
『今も…昨日だって、酒に酔って流されて…したわけじゃない』
何故か、低く怒ったような声音で言うと、ベットの脇の壁にもたれ、一旦何かを振り払うように前髪をくしゃりと崩し、大げさな溜息を吐く。
『いや、悪い…俺としたことが、昨日といい今といい、冷静さを欠いてる…言い訳じゃないが、無防備すぎる萌にも問題はあるからな』
拗ねたように責められるも、拓真君の言ってることの意味が理解できず、頭が混乱してしまう。
『ま、待って…だって、拓真君…私、一応、”女”、だよ…?』
動揺して、浮かんだ言葉をただ羅列してしまうと、今度は小さく溜息を吐き『やっぱりまだバレてなかったのか』と、一人ごちる。
『…どういうこと?』
『今日、萌からもらったメッセージで、俺の気持ちがもうわかってる風だったから、てっきりバレたのかと思ってたんだが…』
『バレ…る?』
言われたセリフを疑問符にして返せば、視線を逸らすことなく、続けてその回答を口にする。
『本当はゲイじゃないってことがさ…』
『…え』
『”ノーマル”なんだ、俺』



