たった7日間で恋人になる方法


『ううん、何か、ちょっとね…不思議だなぁって』
『不思議?』
『だって、一週間前までは、会社でもあんまり話したこともなかったのに』
『…こんな時間に、二人で夜景見てるって?』
『そうそう、しかも時枝君の部屋でね』
『職場の皆が知ったら、驚くだろうな』
『それより、この時枝君を知る方が、衝撃だよ』
『確かに…って、なんだよ?急に、その呼び方』

拓真君が会話を遮って、怪訝な顔で聞いてくる。

私が呼び方を、”拓真君”ではなく、”時枝君”と、元々呼んでいた呼び名に変えたことに気づき、早速指摘された。

『だって、職場で呼び方間違えたら大変でしょ?もう今から、元の呼び名に慣れとかないとね』
『…なんか、よそよそしいな』
『仕方ないよ…元々ただの同僚なんだもん』

微かに見える東京タワーのオレンジの光を見つめながら、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

拓真君にとっては、今日と明日は大して変わらないのかもしれない。

この一週間で、私が勝手に好きになって、明日から気持ちを切り替えなければいけないのは、私だけの話。

残り、1時間半。

このまま私は、今日の終わりと共に、まるで童話の中のシンデレラのように、夢から覚めるんだ。