『大抵の人は勘違いしてるみたいだけど、結構普通の雑誌と同じなんだ。ファッションや占いとか、デートスポットの特集とかね?…ああ、恋愛相談なんかも、普通だな…ノーマルな奴が読んだって、全然違和感ない』
『そう…なんだ』

拓真君の話を聞きながら、今更ながらにその指向の違いに、彼との明らかな距離感を感じる。

私がもし男性だったら、少しは意識してくれたのかな?…なんて、しょうもないことが頭をよぎった。

『それより萌、少しくらい食べれるかな?』

話題を切り替えるように、声のトーンを少し上げた拓真君に、質問される。

『ローストビーフ作ってあるんだ』
『凄い!拓真君の手作り?』
『味は保証しないけどな…今、温めるから、そこ座って』
『私も、何か手伝うよ』
『じゃあ、皿、並べてもらおうか』

軽く腕をまくって、カウンターキッチンの中に入っていく拓真君の後に続く。

その後ろ姿で、彼の着ているカーディガンが昨日買ったものだと気付き『ソレ、似合うね』と言ったら、振り返って『萌の見立てだからね』と微笑まれた。

バーチャルな世界だったら、ほんの2行ほどの些細な会話が、現実にはこんなにも胸を熱くするなんて。

一週間前の自分だったらきっと、わからなかったんだろうなって思う。