ふと、テレビの前にあるガラステーブルの上に、無造作に置かれたままのいくつかの郵便物と冊子が目に留まる。

何となく違和感を感じ、スポーツジムや保険関係のDMと一緒に置かれていた、ファッション誌らしき冊子を手に取ると、男性二人が双子コーデのように仲良く手を繋いでいる表紙。

よく見れば、同性愛者を対象とした雑誌のようだ。

…わかってはいるものの、現実を突きつけられたようで、少なからず気が沈む。


『萌が見ても、大して面白くないよ』


開け放たれたままだった入り口から、私服に着替えた拓真君が入って来ると、手にしていた雑誌をやんわり取り上げられた。

『ごめん…ただのファッション誌だと思って』
『中身はただのファッション誌だよ…それとも何か特別なことでも書いてあると思った?』
『ううん、そういうことじゃ』
『萌…やらしい』
『ち、違うよ、そんな想像してないから』
『そんなって、どんな想像?』
『えっ、あ、どんなって…』

思わず言葉に詰まると、拓真君は声を抑えて笑い出す。

『拓真君?』
『悪い…ちょっと揶揄っただけだ』

そういうと、テーブルの上の郵便物と一緒に束にしてまとめ、ベットの手前にあるローラックの上に置く。