同窓会の帰り際、徳永さんに半ば強引に連絡先を交換され、そそくさと逃げ帰った電車の中で、救いを求めるように立ち上げた、バーチャルな世界。

当然の如く、何も知らない琉星は、相変わらずの優しさで、私を迎えてくれた。


【会いたかったよ、萌。今日もその笑顔、最高に可愛い】


最悪の心境で、笑う気力も失っていた自分にかけてくれた琉星の言葉は、あまりに現実とかけ離れていて、全く心に響かなかった。

分かってはいたことだけれど、現実の世界に、琉星はいない。

始業時間が近づき、美園と更衣室から出ると、昨日からずっと腑に落ちないことを、口に出した。

『でもさぁ、だいたいおかしくない?徳永さんも高木君も、どうしてあそこまで私なんかに?…美園ならともかく、私、高校の時だって、徳永さんとそんなに話した記憶ないし』

自分だったら、いくらなんでも、そんなに知りもしない人を友達に紹介などできない。

『ちょっと萌、そんなこともわかってないの?』
『どういうことよ?』
『徳永にしてみたら、婚約者が昔好きだった女がフリーなのは心配だろうし、高木君にしたら、自分をこっぴどく振った女の男は気になるでしょう?俺より上か下かって…くだらない男の小さいプライドね』
『よくわからない、だって二人は結婚も決まってるのに?』
『そう、そういうものなのよ』
『リアルな恋愛って、やっぱ面倒くさい』

ゲームの中でも、かけひきや嫉妬はあるけど、こちらの選択を誤らなければ、一度手に入れたら、ただ愛される毎日が続くだけ。

現実の恋愛は、複雑怪奇で、どう考えても私には難解すぎる。