ゆっくりと開いたエレベーターに乗りこむと、27階まである階数ボタンの5階が押され、とりあえずホッと、胸をなでおろした。

『5階で安心した?』
『べっ、別に…』
『お望みなら、最上階にラウンジあるけど…行ってみる?』
『行きませんッ』

即座に答えた私を、可笑しそうにクスクス笑う。

この一週間、毎日一緒に過ごしていた拓真君と、あまりにも違いすぎるその容姿に、さっきからずっと違和感がぬぐえない。

それでいて、こんなにも近くにいるのに、不思議と安心するのは、やっぱり拓真君だからなのだろうとも思う。

エレベータを降りると、すぐ右側にあるカーキ色のシックな玄関の前で、小さなモニターらしきものに指先で触れ、指紋認証でロックを解除。

僅かな電子音がして、扉が開いた。

『どうぞ?』
『お、お邪魔…します』

シックなスーツを着こなし、未だ恋人の演技をし続けているような拓真君にエスコートされ、玄関先に足を踏み入れると、相手が危険なことはないのは充分わかっていても、今更ながらに緊張感が高まった。