考えてみたら、この一週間、私の個人的な事由に振り回されたのに、そんな風に思ってくれていたことは、素直に嬉しい。

拓真君にとっても、一緒に過ごしたこの7日間は、決して苦痛な時間だけじゃ無かったって証拠なのだろうから。

『じゃあ、少し、お邪魔…しようかな…』

答えた傍から、拓真君が喜々としているのが、伝わってきた。

『萌!本当に??』
『うん、少しだけならね…明日はお互い仕事だし、そんなに長居はできないけど』
『大丈夫、帰りはちゃんと送っていくから、心配しないで』
『いいよいいよ、まだ全然電車あるし、自分で帰れるから』
『そんなわけには行かないだろ…まぁ、なんなら泊まっていってもらっても、構わないし』
『ハハ…さすがにそれは、マズいでしょ』

苦笑いするも、拓真君は『そう?』と軽く流す。

そういうことを、気楽に言うあたりが、異性として意識されていない証拠なのかもしれない。

当たり前のことだけれど、そう思うと、やっぱり少しだけ悲しくなった。

車は車線を変更し、高速の入り口に向かってまっすぐ加速する。

時刻は、21時20分。

折しも、当初の懸案課題は無事クリアし、すぐに終わってしまうだろうと思っていた拓真君との時間が、ほんの少しだけ伸びたことは、嬉しい誤算と言うべきだろうか。

バーチャル恋愛しか知らなかった私に、初めてリアルな感情を教えてくれ人。

どのみち、諦めなければならないのなら、もう少しだけ、この恋愛シュミレーションを楽しむことにしょう。