『ところで、二次会の打ち合わせは、もう?』

拓真君が、室内の様子を見廻しながら、高木君に問いかける。

『そうですね、その件は大方終わっていて、後はもう適当に雑談をしていたところで…』
『やはりそうでしたか…すみません、全くお役に立てなかったようですね』
『いやいや、そんなに気にしないでください』

心底申し訳なさそうな拓真君に、高木君は恐縮しきり。

そもそも、私は二次会の運営メンバーに選ばれたわけじゃなく、その名目で私を祐樹君に引き合わせることが、高木君達の目論見だったのだろうから、そう謝られると、逆にバツが悪いのかもしれない。

拓真君も、それがわかっていて、わざと言っているようにもみえる。

そして更に、この集まりの主役の二人を前に『では…』と続けて、突拍子もないことを言いだした。

『そのお詫びに…と言っては何ですが、実は事前に、萌から二次会を行う会場を聞きまして、偶然にもちょうど、去年うちが手掛けたレストランだったものですから、今回少々手をまわさせていただいて、多少なりともサービスをさせていただければと…』

いきなりの提案に、目の前の高木君はもちろんのこと、そこにいた誰もが目を丸くした。

”デキル男”を演じるあまりに、完全に気が大きくなってしまっているのか、いくらなんでもそれは、雑用全般をしているだけのただの事務社員が、安易に約束できる内容じゃない。

『た、拓真君?そんなことは、簡単には…』

慌てて止めるも、すぐに制止され、何故かすまなそうな顔をされる。

『ごめん、萌に相談もしないで…実はもう、既に手配済みなんだ』
『え?』
『会場のレストランには、料理のランクアップと、いくつかのオプションを無料で追加してもらってる』

拓真君がどのような手段を使ったのかわからないけれど、嘘をついてるわけでは無いようで、ますます頭が混乱してくる。