『…何?』
『私には時枝君の気持ちはわからないけど、萌、あんたは好きになってるでしょ』
『そ、そんなこと…』
『あるでしょ?』

何故か私の返答を遮り、確信を持ったような声音で、キッパリと断言される。

『いい大人が、自分の変化に気づかない方が問題よ?』
『?…私、なんか変わった…?』

言われて、特別思い当たる節が見当たらない自分に、美園が大げさに呆れるそぶりを見せる。

『まさか、気付いてないの?…って、ああそうね、バーチャルな恋愛世界じゃ、物語もすべて自分主体で、客観的に自分を見れないものね』
『どういう意味よ』
『言っとくけど、何年も萌と付き合ってきて初めてよ、あんたのそんな顔見るの』
『…顔?』
『ほら、その顔』

美園の綺麗な人差し指がスッと伸びて、その指先が、私の額に触れる。

『いかにも好きな男がいますって、”女”の顔してる』

ドキッ

『それに、気付いてる?』

美園がまた、にやりと笑う。

『ここ数日、あんた私に”琉星”の話、してないよ』
『…え』
『あんだけ毎日、日課のように”昨日は琉星とどこどこ行ったぁ”とか、”琉星がこんな事言ってくれてぇ”って、バーチャル彼氏の惚気言ってた萌は、どこ行ったのよ?』
『嘘ッ』

言われて始めて気が付いた。