『で、どうなのよ?』
『どうって』
『初めてのリアルなキスの感想は』

にやりと笑いながら、自分の口元を見つめられて、咄嗟にフォークを持ったままの右手で唇に触れると、昨日のキスの感触を思い起こして耳まで熱くなる。

『その反応じゃ、まんざら嫌だったわけじゃなさそうね』
『一瞬だったし、よくわからないよ…』
『時枝君のこと、好きになっちゃった?』
『そ、そんなわけないでしょ』
『あら、何でよ?一週間毎晩一緒にいて、挙句にキスまでしといて、当然気持ち動いたでしょう?』
『それは…』

動かなかった…と言えば嘘になる。

…けれど、この気持ちの行きつく先に答えがないことは、充分わかっているから。

女性ではなく同性である男性が好きで、既に想いを寄せている人がいる拓真君は、間違っても私を、好きになったりはしない。

でも、だったらどうして私に…?

昨夜から、ずっと自問してる問題が頭をよぎる。

『美園、拓…時枝君は、なんで私に…その…したのかな…』
『は?』
『ねぇ、キスって友達でも、することもある?』

思わず前のめりで質問すると、その質問の意図がわからないという顔をしながらも、少し考えながら答えてくれる。