私を見つけて拓真君が手をあげるので、仕方なくそちらに向かって歩き出す。
『ごめん、また待たせちゃったね』
『女性の方は、やっぱり混んでるよな』
『うん…まぁ…ね』
出来るだけ自然に答えたつもりが、隣に立つ人物を意識しすぎて、少し声が上ずってしまった。
『彼女さん…ですか?』
不意に彼女(いや彼か)に遠慮がちに尋ねられ、拓真君が直ぐに私の肩を軽く抱き寄せると『まあね』と、答えてる。
拓真君の行動はごく自然で、こちらは自分の肩に突然置かれた手に意識が飛びつつ、無意識に目の前の相手を見上げた。
近くで見る彼も、やっぱり透き通るような肌で少女のような可愛らしい顔をしていて、男性のみならず、女性にもモテそうな顔をしている。
『そういうことだから、期待に添えなくて、ごめん』
『いえ…会えてうれしかったです』
少し残念そうな顔をしながらも、彼は手を指しのべ、拓真君はそれに答えて握手をかわすと、私にも軽く会釈をして、そのまま雑踏の中に去っていった。
『拓真君、今の人って…』
なんとなく、彼の消えた方向を見ながら問うてみる。



