『う~ん、迷う…どれも似合ってる気がするし』
『そうか?自分じゃわからないけどな』
『それに、拓真君、なんか立ち姿とか、本物のモデルさんみたい』
『そ、そんなわけないだろ…って、そろそろ映画の時間もあるし、着替えるぞ』
照れくさいのか、フィッティングルームのカーテンを思い切り閉められると、偶然近くにいた女性店員と目が合い、苦笑い。
『”彼”素敵ですね…本当に、モデルさんみたい』
自分と同じか少し歳上だろうか…腰までの緩やかな栗色の髪が印象的な店員に、笑顔で話しかけられた。
『お誕生日ですか?』
『あ…いえ』
『それとも、何かお二人にとっての特別な記念日とか…』
『えっと、特にそういうわけでも…』
返答に困ると、女性店員ににっこり微笑まれる。
『これは失礼しました…こんな風に男性の服選びに女性が一緒に来店する時は、そういう時が多いものですから』
『あの…私達、恋人に見えてますか?』
『はい?』
『あ、いえ…何でもないです』
言ってから、あからさまに自分の顔が赤くなっていくのがわかる。



