『…拓真君？』
『そんな風に、自分を卑下するもんじゃない』
いつもの拓真君より、いくらも大人びた表情で、諭すように続ける。
『萌さんは…自分の評価が低すぎる、自分の言動や態度がどれだけ相手に影響を及ぼすのか、きっと考えたこともないだろ？』
『…えっと…コレ、何の話をしてるの…かな？』
『君は、どれだけ俺を…』
ドキッ…
何故か苦しそうに話す拓真君を見ながら、自分の胸まで苦しくなった。
勝手にまた高鳴り出す胸の鼓動が、どうにも加速してしまう。
『俺は…』
拓真君が何かを言いかけて、口を噤み、まだ黙り込む。
ブゥーブゥー……
ふいに自分のではないバイブレーションの音が鳴り、拓真君がスーツの内ポケットからスマホを取り出すと、誰かからのメッセージだったのか、それを目にして一瞬顔色が曇る。
『どうかしたの？』
『悪い、会社に戻らなきゃいけなくなった…』
『え』
『ちょっとややこしい案件で、時間がかかりそうだから、今日はこの後つきあえそうにない』
『仕事だったら、私も…』
『大丈夫、これは僕のミスだから』
即座に断られ、確かに自分の拙いスキルでは何の役にもたたないことはわかっていても、少し落ち込んだ。
