真新しい制服に身を包み桜並木を歩く。
虹彩高校の入学式へと向かう私、笹川ひかりは風に吹かれて散っていく桜の花びらを眺めながら、今日から新しく始まる日々に温かさを感じていた。
「ひかり、おはよ」
眠そうな眼をこすりながら近づいてきたのは、家も近くで幼馴染みの日向光彩。
私の残酷な過去を知っている唯一の存在だ。
私は彼の方を向くと笑顔で口を「おはよう」と動かした。
「やっぱり、声を出すことはできないのか?」
そういった彼にこくんと頷けば、彼は寂しそうに目を伏せて、それ以上は何も聞いてこなかった。
彼は、やさしい。いつも私が何も口にできなくても気持ちを汲み取って側にいてくれる。
そんな彼と私は高校の門をくぐった。

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