「……なんで、そんなこと言われなきゃいけないの?」
右京さんは、私が執着してもいい唯一の人だと、彼が私に言ってくれた。
「なんででも」
「理由ないのおかしいよ」
そのとき、透真の携帯がなった。
透真は大きく舌打ちをして、その電話に出ると眉をひそめて電話口に静かに怒鳴る。
そして、電話を切ると、そのまま家を出ていった。
「透真……、」
どこいくの、っていつもなら聞かないのに。
私は聞こうとして、その手を伸ばした。
そんな私を見て、透真はなにも見なかったフリをして。
私はバイクの遠くなる音が聞こえなくなるまでそこにいた。


