副総長さんは、どうやら私のことがほっとけないみたいです。






「あれ? そのストラップ……」



視線を落とした先には、千里さんのポケットから出てるクマのストラップ。


その見覚えのあるストラップは、間違いなく私がここで拾ったものだ。


あの時の複雑そうな顔をしていた千里さんを思い出す。




「どうして……」



捨てようとまでしていたストラップを。

彼は大事に携帯につけているんだろう。



顔をあげた私に、千里さんは優しそうに笑うと、指でクマの顔を撫でる。





「……やっぱり大事だから。そして、大好きなものだから、肌身離さず持っておこうと思ってね」



大事で、大好きなものだからこそその執着から離れなきゃと、あのとき捨てようと思ったのだろうか。



なにかを思い出すようにそのクマのストラップをみる千里さんはいつもになく真面目な表情で。


少し、ドキッとした。





その時、クマのストラップが揺れた。