副総長さんは、どうやら私のことがほっとけないみたいです。






「………『時雨』がどうかしたのか?」



透真もさすがに拗ね続ける訳にもいかないと思ったのかこちらを向いて真剣な目をしている。


やっぱり幹部だな、透真は。




「最近、急激に力を伸ばしてる。
トップが半年前に変わっただろ? 多分それがきっかけだ」



「『時雨』のトップか」



「トップが変わったって言ったってまだ俺ら見たことないんやけどな」



「全然表に出てこないからね」




噂では冷酷で女みたいに美人だとか、その反対でゴリラみたいに厳ついやつだとか、色々聞くけどどれも嘘臭い。




「………そのトップが相当カリスマってことか?」


透真は眉を潜めながら言った。




「…………そうだな、俺はそう見ている。だからこそ厄介だ。バランスが崩れたらな」




「……『時雨』の総長、な」



「なに透真。なんか知ってるの?」



考え込んだように呟いた透真にきく。




「…………いや、なんも知らね」




透真はそう言って、



「便所~」




と部屋を出ていった。





「透真、どないしたんやろ?」




なにか知ってそうに思えたけどね。



知らないというなら、問い詰めることもできない。





僕は透真の出ていったドアを、そのまま見つめていた。