僕がそう言うと、透真はわざと聞こえるように
「チッ」
と大きく舌打ちをした。
おいおい、そうやって癖にするからひよちゃんにもしちゃうんじゃないの?
つい昨日、後悔してたじゃん。
「……なにがあったか知らないが、仲良くしてくれ。今ちょっと厄介なんだ」
「厄介って、『時雨(しぐれ)』のことやろ?」
「あぁ」
時雨。
それは僕たち『陽炎』と同じ、暴走族だ。
治めてる地も同じでこの街。
だけど、仲間というわけではない。
だからといって敵というわけでもない。
でもいわゆる、同業者的な感じでギスギスはしている。
僕たちは『時雨』と仲良くしたくないし、『時雨』も僕たち『陽炎』とは仲良くしたくない。
この街は『陽炎』と『時雨』が勢力を二分しているからこそバランスがとれている。
この力バランスが崩れると暴動に発展する恐れはある。
理由は、僕たちは今『時雨』と抗争しても得られるものは何一つない。それは向こうも同じ。
抗争して、勝ったとしても絶対に被害は大きいし『時雨』派の奴等を押さえるまで手が回らない。
だけど勢力に差が出てしまったらそれも可能になるのだ。
だから、僕らは自ら勢力を弱めることは絶対にせずとも、『時雨』とのバランスをとるために強くなくちゃいけないんだ。


