【千里side】




「別に私は、千里さんのこと好きじゃないよ」




ひよちゃんはそう言ってこっちを振り返ることなく階段を上っていった。


その背中を穴が開くように見つめて、見えなくなった後。





「…………透真、ひよちゃんになに言わせてるの」



僕は透真のほっぺたをつねった。



その光景を見てキャーッと歓声が上がる。

僕は全く今いい気分じゃないんだけど。




僕はわかっている。


透真がひよちゃんに僕は似合わないといった真意を。




「透真、あれってひよちゃんに僕が見合ってないってことでしょ?」



「当たり前じゃん、はっきりフラれてたね。千里さん」



ほっぺたを伸ばされてるにも関わらず相変わらずかっこいい顔で笑って見せる透真。


それはにこやかな笑顔というより、憎たらしい笑顔だ。




「ったく。誰ならいいの? シスコン」



「ひよは誰にもあげない」



「ひよちゃんに嫌われるよ?」



「もう嫌われてるからいいの。あとひよって呼ばないで」





嫌われてる…………?


本当にそう思ってるなら、透真は本当にバカだな。



ひよちゃんのあの顔は、透真を心配してる顔だろうに。