急いで電話をかける。
今風呂に入ってるだろうか。それとも夕飯か。

そんなのはどうでもいい。俺は拗ねてるんだ。


「……はーい!」

「うるせぇこえがでけぇ」


あぁ。あいつの声だ。
小さい頃から死ぬほど聞いている声。柔らかくて、儚い声。
本人は埃みたいだ、って嫌がってたけど、俺は何となく好きだ。



「どうしたの?」

「いまどこ。」


周りで女がはしゃいでる声がきこえる。
ってことはまだ外にいんのか。


「え?駅前のモールだけど」

「わかった。」

「え、蒼空?ちょっ……」



同居している兄にメールを送り、早歩きで駅に向かった。