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『さぁ!それでは今からクリスマス会を始めます。』



広い教室も、今日は沢山の人で埋め尽くされている

11月から練習した、歌やお遊戯を披露する舞台には、ビデオカメラを片手に真剣そのもののパパやママ達の姿

あたしが、ピアノの前に座って伴奏を始めると、子供たちは元気に声を合わせてクリスマスソングを歌い始めた。

次の劇の為に様々な衣装を身に付けた子ども達

鳥だったり、木だったりお姫様だったりするのだけれど、大きく口を開けて一生懸命歌う子どもたちはとっても愛らしい。

保母の仕事を選んでよかったなって今日も思う



三曲目の楽譜を開いて伴奏を始めたとき教室の扉がそっと開くのが目に入った

入ってきたのは背の高い男性


“え?”


一瞬、危うく止まりそうになる手をなんとか動かしあたしは伴奏を続けた

若干低めの扉から、体を小さくして入ってきたのは、なんとあのお隣さんの彼

彼の後ろから、拓海くんのママとパパが同じようにそっと入って来るのが見える

三人は、観客席の一番後ろに並ぶと立ったまま、拓海くんに向かって小さく手を振った

拓海くんのママは美人でサバサバしたとっても気のいいお母さん。

パパは運動会以来、見るのは二度目だけど、拓海くんとよく似たモデルばりのイケメンお父さん。
一番後ろに立っているのに、何故かその一角だけやたらと華やかな・・・そんな感じがしてしまう。

お兄さんと何やら話し込んでいるお隣さんはやっぱり拓海くんパパとは兄弟で、雰囲気も見た目も凄くよく似てる

3ヶ月隣に住んでいて、顔を合わせた事だってあったはずなのに、何で気づかなかったんだろう