『あっ!走っちゃ駄目だよ!』



慌てて声をかけるが既に遅く、拓海くんの姿はもうそこにはない


ふうっと一つ息をついて拓海くんの消えた引き戸に目をやると

廊下のその向こうの窓から、先日新しく植えたもみの木が目に入った

隣人さんの背丈ほどのもみの木も、今日はクリスマスのため、ライトやリボン・・・様々な飾り付けが施されている

隣人さんは植木屋さんらしく、幼稚園に現れた時は本当に驚いたっけ

思わずくすっと笑みがこぼれる

和真とのことでは本当に沢山泣いたけど、ことのほか早く立ち直れたのは多分隣人さんのお陰。

落ち込んだあたしを気遣っての言葉だろうけど、隣人さんの優しい言葉であたしは笑顔を取り戻せたような気がするから



『よ〜し!頑張るぞっ!』



派手な装飾のもみの木もあたしを応援してくれてるみたいに思えてくる

今年は沢山の子供たちと過ごすクリスマス

それはそれで“すごく幸せ”だってあたしは思った。