飾り付けの手を止めて拓海くんを見ると

拓海くんはことのほか神妙な顔をしてあたしを見上げてくる



『あのね?俺と兄ちゃんどっちが格好いい?』



じっと、真剣そのものの目で、あたしの答えを待つ拓海くん


拓海くんの言う兄ちゃん・・・って・・・


拓海くんの叔父に当たる、マンションの隣人の顔を思い出す


和真に振られたあの日

さらに鍵を無くし、ずぶ濡れで扉の前に倒れていたあたしを拾って、助けてくれた人

今、目の前でエプロンを掴んで離さない拓海くんの、パパの弟さんだそうで、拓海くんにとってはお兄ちゃん的存在らしい



『うーん・・・拓海くんかなっ!』



見上げてくる瞳をじっと見つめて答えると、拓海くんはようやく表情を緩めて、にっこりと微笑んだ


あ、
こういう顔、やっぱり似てる・・・


すこし首を傾げて嬉しそうに目を細める仕草は、血の成せる業なのか?本当に隣人さんとよく似ている



『よかった!

じゃあ、練習してくる、ゆづ先生!』



拓海くんはエプロンから手を離すと、くるりと向きを変え教室の外へと駆け出して行った