はじまりは、そう。






君と私が出会った瞬間。







夏の始まり、階段を上るだけで少し汗をかく。


そんな日。



さっき降りたばかりの電車の窓に、夕日が差し込む。



そんな時。





「落ちたよ」




むさ苦しい空気の中を切り裂いていくように透き通る声が、私の進む足を止めた。



その人は、私が立つ二段下のところまで、鈴の音を鳴らしながら上ると、やっと同じ目線の高さになる。



「リュック、全開」



そう言いながら、私の大切な鈴のキーホルダーを渡した。




…その瞬間。




私はきっと初めて恋をしたと思う。