「海くん」


わたしがようやく言葉を発すると、彼はほんの少しだけびくりとしてゆっくりとわたしの腕をつかむ手を離した。


「...わたし、確かに今から先輩のもとへ行こうとしていたけど、それは、」


「ま、待って」


「え?」


「...はっきりとフッてほしい。

折山さんのことだから、優しく言ってくれるかもしれないけど、俺、ちゃんとフラれないと...諦めがつかなくなる」


海くんは、覚悟を決めてわたしのところに来てくれた。


それはどうやら...フラれる覚悟、も含まれているようだ。


「...やだ」


わたしははっきりとフるのではなく、海くんのお願いをはっきりと断った。


これまで逃げていた罰、だよ。


それくらい、いいでしょう?