“好きだ”


わたしの耳に届いた吐息混じりのその言葉。


わたしの......聞き間違いだろうか。


先輩が待っている音楽準備室に向かおうと渡り廊下を歩いていたら、

後ろから走ってくる足音が聞こえてきて、

だれだろうと振り返ったのと同時に腕をつかまれて、

そこに立っていたのは予想もしなかった彼で。


「ーー好きだ」


彼は息を整えてから、

もう一度。

わたしの目を見てはっきりとその言葉を告げた。

それと同時にわたしの腕をつかむ力がきゅっとこもった。


わたしは驚きすぎてなにも発することができない。


だって、あまりに突然すぎて。


そんなわたしをよそに、海くんはさらに言葉を繋げる。


「榊原先輩のことが好きなのは知ってる。

俺の気持ちが迷惑なのも分かってる。

それでも...好きなんだ。折山さんのことが」