「ーー卒業証書、授与」
3月1日ーー卒業式。
どうして在校生も参加しなければいけないのだろう。
卒業生と保護者だけで行えばいい気がする。
仲のいい先輩だっていない俺からしたら、授業なくてラッキー、ぐらいだ。
きっと、今日ほど憂鬱な日はないだろう。
俺は今日から、折山さんへの気持ちを消す努力をはじめる。
すぐに消すことができないことは自覚してる。
だって、今クラスメイトのあいだに座っている折山さんの姿が半分見えるだけで、こんなにも悔しいほどに胸が高鳴る。
だけどきっと折山さんも、先輩の名前が呼ばれるとき、俺と同じように胸を高鳴らせるのであろう。
折山さんとの共通点がそれだなんて、1ミクロも喜べないな。



