思わず惹かれるまま無意識にその額に唇を寄せると四季の僅か驚愕混じりの声が耳を掠めた。



「・・っ・・・意外・・です」


「・・・・何が?」


「の、望様は・・・・もっと自分の感情のままにする方かと・・・・」


「・・・・・・・・・・・・お前・・・、俺をどんな印象で見てる?」


「・・・・見たまま感じたままです」



一瞬すぐに反論を返そうと口を開くが、今までの四季への扱いを思い出せば言葉は摘み取られ納得する。


確かに・・・他の女へしていたような上っ面の優しさはこいつには示してこなかったか。



「・・・っ・・・ご希望なら印象のままに行動しようか?」



苦し紛れに嫌味を落とし、再び優位に戻ろうとした結果。



「・・・・っ・・・この・・・望様が・・いいです」



首を小さく横に振り視線を逸らすと俺の袖をキュッと掴む四季の姿。


その姿に動悸が走った段階で完全なる俺の負けだろう。


舌打ちを返してみせるくせに四季の手に自分の指先を絡ませてしまったのもまた負け。


すぐに驚いた目で見上げる四季から逃げるように視線を外すと不本意そうに声を響かせた。



「・・・・・恐かったら・・力いっぱい握っておけ。・・・・やめるかは保証しないが・・・」


「・・・・・・望様は・・・」


「いい、・・・その続きは言うな」


「・・・・・はい」



容易に想像できた四季の言葉を遮って、自分が羞恥に染まるのを防いだ。


それすらも気がついて小さく笑う四季の表情は、言葉にしなかった事を伝えてきている。




『望様は・・・・・優しいんですね』




お前の事だ・・・どうせそんな生易しい感想を抱いていたんだろ?


今まで俺がお前にしてきた仕打ちを全て消去して。


それは・・・的外れだ四季。


本当に優しい男なら仕事と名打ってまでおまえの自由を奪ったりしないだろう。


そんな欲の中に垣間見せる罪悪感を消す様な優しさに、嫌悪や軽蔑もなく微笑んでくるお前の方がよっぽど・・・・。




胸の奥が焼けるほどに熱い。


苦しくてその部分を掴むのに、肉体に阻まれてその痛みに手は届かず。


力なく口元に弧を描くと目的を果たせなかった手でせめてもと自分のシャツのボタンを緩めて。


未知の経験を前に小刻みに震えている四季の指先に気がつけば、柔らかにその手を握り返してしまっていた。