四季の要望は自分で意識せずとも実行してしまっていた。
赤面し、本当にこんな経験がないのだと感じさせる様な反応に要求。
見事煽られ腕の中に四季を引き寄せ抱きしめる。
柔らかい髪に指先を走らせ絡めながら頭に添えて、自分の左肩にそっとその頭を預ける四季。
チラリと横目で確認した窓の外は完全なる濃紺の静かな深夜で、穏やかに風が流れているのか木々が僅かにざわめくのを視界で確認した。
「・・・・・・・安心します」
「・・・あっ?」
ぽつりとようやく言葉を落としてきた四季に言葉の意味が分からないとその顔を覗き込むように下を向けば、すっと顔をあげ口の端を軽くあげてくる。
「・・・・今日は・・・望様の匂いで安心します」
「・・・・・・・・・変態か」
「・・・っ・・な、そう言う意味じゃ・・・・、望様はいつもキツイ香水の移り香をつけていらっしゃるから・・・」
照れながら、それでも心外だというように眉根を寄せた四季がぼやくのを見降ろし、確かにいつも香水臭い女が周りに多いと納得してしまう。
今思えば・・・・あれは公害に値しないんだろうか?
香水禁止でも社内でするか?
なんて一瞬思ってしまったけれど、すぐにその意識は四季の声に引き戻される。
「望様・・・・また、公私混同しようとなさってませんか?」
「・・・また読んだのか?」
「ふふっ、・・・いいえ、だから・・・読むまでもありません」
まるで読まなくても俺の考えなんてお見通しだというように柔らかく微笑む四季に、子供の様にムキになる半面どこかくすぐったい様に歓喜する。
ああ・・・これは・・・・。
俺らしくない・・・・。
四季の緩やかなペースに引き込まれ、それに嫌悪するどころかぬるま湯の様で気持ちいい。
いつまでも浸っていたいくらいの時間だけど、さすがに同じくらいに欲も疼く。
「・・読むまでもない・・・か、」
「・・・・はい?」
「なら・・・俺が今何を考えてるか読まなくても分かってるのか?」
「・・・・・【馬鹿女】・・・とか?」
その言葉に思わず噴き出して下を向く。
くっくっくっと堪え切れない笑いを零して体を折り曲げると、さすがに気分を害したらしい四季がそれを示すように声を響かせた。



