こいつの腹の立つ所・・・。


まるで駆け引きの様な気を引く仕草をいとも簡単に天然でする所だ。


いや、他の女がこんな事をしてもきっと心で嘲笑を漏らしたりして反応もしない筈。


なのに・・・。



「・・・っ・・・ムカつくな」


「・・っ・・・すみませっ・・・、なるべく黙ります・・・」



俺の一言に困ったように視線を落として更に口元をしっかりと覆う四季を、力を抜く様に深く息を吐いてからその手にそっと指先を絡めた。



「・・・外せ・・、そんなにガードされてたらキスも出来ない・・・」


「・・・・・望様・・・は・・・、キスが・・お好きですね」


「・・・嫌とか言ったらクビにするぞ」


「・・・・【職権乱用】って言葉はご存知ですか?」


「馬鹿にしてるのか?パワハラやらセクハラやら仕事には大小少なからず存在するって記憶しておけ」


「・・・・大・・・【小】?」



明らかに不満げに【小】の部分を強調してくる四季に舌打ちして睨み返す。


ああ、確かにこれはセクハラ以上のそれだろうけどな。


クソッ・・・こいつと話していると一気にどこか抜けた会話になっていく。


気がつけばいつもの様な雰囲気に流れ込みそうなそれに落胆しかけたタイミングに遠慮がちに入り込んできた声。



「・・・・っ・・・でも・・・気持ち・・いいです」



一瞬言葉を疑って驚きのままに四季を見つめれば、未だに口元の手はそのままに耳まで羞恥に染めた顔で俺を見つめ返してくる。


揺れるグレーに魅了される。


言われた言葉に一気に扇情的な空気も舞い戻る。


そして後押しするようにつけたされた言葉、



「望様のキスは・・・・気持ちよくて熱くてクラクラします・・・・・」


「・・・っ・・・お前・・、マジに素なのか作戦なのか仕事としてのリッピサービスなのか?!」


「・・・・・あの??・・・・よく・・分からないです」



もう・・・いい・・・。


疑問で眉根を寄せた四季を確認して、すぐに添えてあった手に力を入れ四季の口元を露わにした。