暴君と魔女





「本当・・・・面倒な女だ・・・・」



喋ればその息が唇にかかるほどの至近距離。


それでも口元は相手からは見えないその距離で、言葉とは相反する弧を描いてすぐにその腕を引き歩き出す。



「あ・・の、望様?」


「・・・・俺の部屋ならいいだろ」



疑問をぶつけてきた四季を振り返るでもなく先を歩きながら返事を返す。


振り返ったらきっとまた尋常じゃないくらい赤面した四季がいるのかと、想像すればその姿に変に動悸が走る。


アホか・・・・、子供じゃあるまいし。


しかも感情のない関係だと断言されているのに・・・。


なのに・・・・、これから迎える時間に見事気持ちが急いて。


だけど単なる欲情のみでないそれが、今まで経験した時間の中に記憶が無い。


長く薄暗い廊下を感情任せに四季の腕を引いて歩いて不思議な感覚に陥っていく。


掴んでいる四季の手首の脈が速いのにまで敏感に気がつき、そのタイミングに不意に耳に響く声。



「望・・・様・・・・」


「・・・・・何だよ?」


「・・・・あ・・の・・・・・・どうしましょう」


「・・・・・あっ?」



足を止めここで初めて振り返ったのは自分の部屋の前だったからという事もある。


扉の前に立ち、やや後ろで動きを止めた四季を怪訝な顔で振り返ったのに一気にその表情は崩されてしまった。



「・・・っ・・・凄く・・・凄く・・心臓が痛いです」


「・・っ・・・・泣きながら・・・言うなよ・・・」



こっちの胸まで激しく痛んで息が苦しくなる。


子供の様に涙を流して、その涙を必死で手で拭っている四季に複雑な感情が渦巻いて息苦しい。




「そんなに・・・・泣くほど俺を拒むのか・・・・」




掴んでいた手をスルリと離し、そのまま自分の顔を覆って壁に寄りかかる。


ここまではっきり拒絶を示されると笑いたくもなってくる。


とか、言って・・・思いっきりヘコんで不動なんだが。


目に見えて落胆しどうやっても得られない四季の感情に、今までの人生経験では引用出来る対処法が見つからず深く息を吐いていく。


だけど直後の衝撃。